第4回 日商簿記3級 個別指導テキスト

その他の債権・債務

今日のゴール

1 貸倒れの際の勘定科目を理解する Section 03
2 状況に応じた債権債務を選択できるようになる Section 01〜09

この授業で主に登場する勘定科目

Section 01

約束手形

約束手形とは、振出人(支払人)名宛人(受取人)に対して、支払期日に決まった金額を支払うことを約束する証書。

なぜ手形を使うのか

売掛金・買掛金より法的な強制力が強い。未払いの場合は法的手続きを取りやすいため、信用取引の担保として使われる。

手形と小切手の違い

現金化できるタイミングが異なる。
小切手 → 受け取ったらすぐに銀行で現金化できる(即時決済)
約束手形 → 支払期日にならないと現金化できない(期日決済)

立場 勘定科目 分類 仕訳の方向
名宛人(受取人) 手形を受け取った 受取手形 資産(B/S) 借方(左)に計上
振出人(支払人) 手形を振り出した 支払手形 負債(B/S) 貸方(右)に計上

例1|商品10,000円を売り上げ、代金は約束手形で受け取った

借方(左)
受取手形 10,000
貸方(右)
売上 10,000

例2|商品10,000円を仕入れ、代金は約束手形を振り出して支払った

借方(左)
仕入 10,000
貸方(右)
支払手形 10,000

Section 02

でんさい(電子記録債権・債務)

でんさい(電子記録債権・債務)とは、手形の電子バージョンのようなもの。電子的に記録・管理される。勘定科目が異なるだけで、仕訳の考え方は手形と同じ。

立場 勘定科目 分類
売上側 売上代金にかかる債権を電子記録した 電子記録債権 資産(B/S)
仕入側 仕入代金にかかる債務を電子記録した 電子記録債務 負債(B/S)

例1|売掛金10,000円について、でんさいネットに電子記録した(売上側)

借方(左)
電子記録債権 10,000
貸方(右)
売掛金 10,000

Section 03

貸倒れ

貸倒れとは、受取手形や売掛金などの相手先が倒産などによってお金を回収できなくなることをいう。

貸倒引当金とは

将来発生する可能性がある貸倒れを事前に見越して計上する金額。貸借対照表上、金銭債権のマイナス(控除項目)として表示される。

売掛金100
貸倒引当金▲ 5
95

① 貸倒引当金の設定(決算整理)

翌期以降に貸倒れが見込まれる金額は実質的に資産価値がないと考える。そのために決算ごとに貸倒引当金を設定する。

貸倒引当金の算定

金銭債権の残高 × 貸倒実績率 = 貸倒引当金(設定額)

差額補充法

すでに残高がある場合、設定額と残高の差額だけを追加計上する方法。

例)設定額4,000円、残高1,000円 → 追加計上額 = 3,000円

例|売掛金残高200,000円、貸倒実績率2%、引当金残高1,000円(差額補充法)

借方(左)
貸倒引当金繰入 3,000
貸方(右)
貸倒引当金 3,000

200,000 × 2% = 4,000円 設定額4,000 − 残高1,000 = 繰入額3,000円

② 貸倒れの処理

貸倒れ処理 フローチャート

貸倒れ
発生
前期以前発生
の金銭債権
貸引残あり
足りる
貸倒引当金
貸引残あり
足りない
貸倒引当金全額
+ 貸倒損失
貸引残なし
貸倒損失
当期発生
の金銭債権
貸倒損失

例1|前期発生の売掛金10,000円が貸倒れた。貸倒引当金残高15,000円

借方(左)
貸倒引当金 10,000
貸方(右)
売掛金 10,000

例2|前期発生の売掛金10,000円が貸倒れた。貸倒引当金残高7,000円(引当金が不足)

借方(左)
貸倒引当金 7,000
貸倒損失 3,000
貸方(右)
売掛金 10,000

例3|前期発生の売掛金10,000円が貸倒れた。貸倒引当金残高0円(引当金なし)

借方(左)
貸倒損失 10,000
貸方(右)
売掛金 10,000

例4|当期発生の売掛金10,000円が貸倒れた。貸倒引当金残高7,000円あり

借方(左)
貸倒損失 10,000
貸方(右)
売掛金 10,000

③ 貸倒れ処理後の回収

当期に貸倒れ処理した債権の回収 → 当期中の処理の逆仕訳

例5|当期に貸倒損失として処理した売掛金5,000円を現金で回収した

借方(左)
現金 5,000
貸方(右)
貸倒損失 5,000

前期以前に貸倒れ処理した債権の回収 → 償却債権取立益(収益)を計上

例6|前期に貸倒れ処理した売掛金8,000円を現金で回収した

借方(左)
現金 8,000
貸方(右)
償却債権取立益 8,000

Section 04

貸付金・借入金

金銭の貸し借りを行ったときに使う勘定科目。

貸手(お金を貸した側)
貸付金

現金は減少するが、返済を請求できる権利(資産)

借手(お金を借りた側)
借入金

現金は増加するが、返済しなければいけない義務(負債)


① 利息

金銭の貸し借りには利息が発生する。

利息の勘定科目

利息を受け取ったら → 受取利息(収益)
利息を支払ったら  → 支払利息(費用)

② 利息の計算

利息 = 元本 × 年利率 × 期間

月割計算

期間を月数 ÷ 12 で計算

例)元本100,000円・年利3%・6か月
100,000 × 3% × 6/121,500円

日割計算

期間を日数 ÷ 365 で計算

例)元本100,000円・年利3%・73日
100,000 × 3% × 73/365600円

語呂合わせ:246911(にしむくさむらい)

小の月(31日未満):2月・4月・6月・9月・11月
それ以外(1・3・5・7・8・10・12月)は31日。日割計算で日数を数えるときに使う。

前提|A社はB社に現金100,000円を年利3%・6か月の条件で貸し付けた

A社(貸手)の仕訳

例1|A社:貸し付け時

借方(左)
貸付金100,000
貸方(右)
現金100,000

例2|A社:6か月後、元本と利息を現金で回収した

借方(左)
現金101,500
貸方(右)
貸付金100,000
受取利息1,500

B社(借手)の仕訳

例3|B社:借り入れ時

借方(左)
現金100,000
貸方(右)
借入金100,000

例4|B社:6か月後、元本と利息を現金で返済した

借方(左)
借入金100,000
支払利息1,500
貸方(右)
現金101,500

③ 手形貸付金・手形借入金

金銭の貸し借りの際に、借用証書の代わりに手形を振り出すことがある。その場合は専用の勘定科目を使う。

立場 勘定科目 内容
貸手 手形貸付金 手形を受け取って貸し付けた
借手 手形借入金 手形を振り出して借り入れた

例5|現金100,000円を貸し付け、約束手形を受け取った

借方(左)
手形貸付金100,000
貸方(右)
現金100,000

例6|約束手形を振り出し、現金100,000円を借り入れた

借方(左)
現金100,000
貸方(右)
手形借入金100,000

Section 05

未収入金・未払金

本業(商品売買)や金銭の貸し借り以外の取引によって生じた金銭債権・債務に使う。

取引の種類 代金未回収(債権) 代金未払(債務)
本業(商品売買) 売掛金・受取手形・電子記録債権 買掛金・支払手形・電子記録債務
金銭の貸し借り 貸付金・手形貸付金 借入金・手形借入金
その他の取引 未収入金 未払金
典型的な例

・土地・建物・備品などの固定資産を購入したが代金が未払い → 未払金
・土地・建物・備品などの固定資産を売却したが代金が未回収 → 未収入金

例1|備品200,000円を購入し、代金は翌月払いとした

借方(左)
備品 200,000
貸方(右)
未払金 200,000

例2|帳簿価額300,000円の土地を300,000円で売却し、代金は来月受け取ることにした

借方(左)
未収入金 300,000
貸方(右)
土地 300,000

Section 06

受取商品券

商品を販売した際、代金の代わりに他店発行の商品券を受け取ることがある。後日、発行元に商品券を持ち込むと現金と交換してもらえるため資産として扱う。

受取商品券(資産)

発行元への請求権があるため資産。現金の代わりに受け取ったイメージ。

例1|商品5,000円を販売し、代金として商品券5,000円を受け取った

借方(左)
受取商品券 5,000
貸方(右)
売上 5,000

例2|受け取っていた商品券5,000円を発行元に持ち込み、現金で受け取った

借方(左)
現金 5,000
貸方(右)
受取商品券 5,000

Section 07

仮払金・仮受金

相手勘定が確定していない、または金額が定まっていない場合にとりあえず使う一時的な勘定科目。内容が確定したら正しい勘定科目に振り替える。

とりあえず支払った
仮払金

金額が未確定(概算)で支払った時に使用する。なんらかのサービスを受ける可能性があるため資産

とりあえず受け取った
仮受金

内容が未確定(不明)で受け取った時に使用する。なんらかのサービスを提供しなければいけない可能性があるため負債

例1|従業員の出張にあたり、旅費の概算額30,000円を現金で渡した

借方(左)
仮払金 30,000
貸方(右)
現金 30,000

例2|普通預金口座に50,000円の振込があったが、内容が不明だった

借方(左)
普通預金 50,000
貸方(右)
仮受金 50,000

Section 08

給料まわりの勘定科目

① 立替金・従業員立替金

他人の支払いを代わりに立て替えた場合、後日回収できる権利(資産)として立替金を計上する。相手が従業員の場合は従業員立替金を使う。


② 預り金・従業員預り金

他人の金銭を一時的に預かった場合、返還義務として預り金(負債)を計上する。

内容 勘定科目
従業員から預かった金銭 従業員預り金
従業員負担分の社会保険料を給料から天引きして預かった 社会保険料預り金
従業員の所得税を給料から天引きして預かった 所得税預り金

③ 法定福利費

社会保険料には会社負担分従業員負担分がある。会社が自社負担分の社会保険料を支払ったときは法定福利費(費用)を計上する。


例1|給料300,000円の支給時。所得税10,000円・社会保険料(従業員負担)15,000円を天引きし、残額を現金で支払った

借方(左)
給料 300,000
貸方(右)
所得税預り金 10,000
社会保険料預り金 15,000
現金 275,000

例2|社会保険料を納付した。会社負担分15,000円・従業員負担分15,000円を現金で支払った

借方(左)
法定福利費 15,000
社会保険料預り金 15,000
貸方(右)
現金 30,000

Section 09

差入保証金

不動産を借りる際に支払う敷金・保証金差入保証金勘定を使う。

なぜ費用ではなく資産なのか

退去時に返還を受けることができる権利(資産)であるため、支払ったときに費用にはならない。逆に返還されないことが確定している敷金・保証金は費用となる。

例1|事務所を借りるにあたり、敷金200,000円を現金で支払った

借方(左)
差入保証金 200,000
貸方(右)
現金 200,000

例2|退去にあたり、敷金200,000円が普通預金口座に返還された

借方(左)
普通預金 200,000
貸方(右)
差入保証金 200,000

今日のまとめ

1 貸倒れの際の勘定科目を理解する
前期以前発生:貸引残の有無・充足度で 貸倒引当金 / 貸倒損失 を使い分ける 当期発生:貸引残に関わらず全額 貸倒損失 回収時:当期処理分は逆仕訳 / 前期以前処理分は 償却債権取立益
2 状況に応じた債権債務を選択できるようになる
手形・でんさい → 受取手形 / 支払手形 / 電子記録債権 / 電子記録債務 金銭の貸し借り → 貸付金 / 借入金(手形なら 手形貸付金 / 手形借入金) 本業以外の未決済 → 未収入金 / 未払金 内容未確定の入出金 → 仮払金 / 仮受金 給料まわり → 立替金 / 預り金 / 法定福利費 敷金・保証金 → 差入保証金(資産)